ここ最近ジャパンヴィンテージって言葉が広まったなぁ~っと感じてる管理人です。
私がベースを始めたころは、インターネット黎明期でしたので、ジャパンヴィンテージなどという言葉は今ほど広まっていませんでした。
それが今では「70年代!ジャパンヴィンテージ!激鳴り!!!」などとヤフオクで書かれてるのを見て、不思議な気持ちになるのも事実なのでこの記事を書いてます。
最初に…ジャパンヴィンテージ=良いものと考えている方に対して忠告。
ジャパンヴィンテージと呼ばれているギター・ベースが全てが良い訳ではありません。
現行品でもこれは良い!ってものもあれば、えっ?これでこの金額?みたいなのありませんか?
使えない個体もたくさん買いましたし、ただのコレクターズアイテムやんけ。って感じるものも見てきました。
何を持ってジャパンヴィンテージって言われてるのか、自分で思ったことを書いてるので、流し見してもらって結構です。
この記事では日本の楽器作りの歴史、ジャパンヴィンテージと呼ばれてるギターやベースを買おうとしている人にジャパンヴィンテージを購入するメリットやデメリットをを書いてみました。
ジャパンビンテージ:日本の楽器作りの歴史
戦後から日本では楽器作りが行われていましたが、エレキギター・エレキベースの製造が盛んになったのは1970年に入ってからでしょうか。FenderやGibsonのギター・ベースの現物がまだまだ満足に流通されていなかった時期、楽器メーカーの方たちは有名アーティストたちの使っているギターやベースの写真を見て想像で作っていました。
当時はネットも資料もなかったので、写真を見て作るしかなかったんです。
正面しか映ってないからレスポールタイプなのに裏側がボルトオンだったり、ネックプレートのサイズが小さかったり、前から見たら綺麗な1ピースボディでも、横から見たら何層にもなってる合板だったり、とにかく面白い楽器が生み出されていました。
ですから70年代前半の日本製のギター・ベースはよく言えば革命的であり、悪く言えば実験的。ググっても情報が出てこないメーカーを購入する際には注意が必要。
そんな試行錯誤を繰り返しながら本物のFenderやGibsonを手に入れた楽器メーカーはそれらを分解し、本家にそっくりなギター・ベースを作りだします。
今まで触ってきたジャパンヴィンテージと呼ばれるベースですが、楽器としての完成度が高くなってくるのは77年くらいからかな?といった印象です。おっ?なんか良いぞこれ…!っていうのに巡り会える。
70年代末から80年代前半の日本はコピー大国
写真なんかを見て見よう見まねで楽器を作っていた時代も終わり、本家のギター・ベースを手に入れた楽器メーカー「どのメーカーが一番本家に近いかの戦い」が始まりました。
本家と同じ木材を使い、さらに本家の半値以下の料金で販売していきました。
当時のコピー製品で有名なメーカーといえば…
・Greco
・Tokai
・Aria ProⅡ
・FERNANDES
といったところでしょうか。他にもたくさんのメーカーがフェンダーやギブソンをコピーして販売していました。YAMAHAやKASUGAなんかも良い楽器が沢山あります。
本家のフェンダー&ギブソンが日本のコピー品に驚異を感じる
フェンダーやギブソンが日本でマーケティングをしようとした時、日本ではフェンダー&ギブソンを模造したコピーモデルが蔓延。
本家の半額以下の値段でコピー品が楽器店にはズラリと並んでいるわけです。違うのって言ったらヘッドのロゴくらいですが、ロゴ自体もかなり似せて作られています。
…アウトですね。iPhoneをコピーしたスマホどころの騒ぎじゃありません。
本家「よかろう。戦争だ。」
本家フェンダー・ギブソンは日本楽器メーカーと裁判を起こし戦います。
結果的にヘッドの形を微妙に変えたり、ジャズベースとかプレシジョンベースと言った名前を使うことはできなくなりました。ジャズベタイプとかプレベタイプと呼ばれるのはこの時の制約だそうです。
Fender Japan設立
今までみたいにコピー品ばかり作ってたらいけないってことで日本の楽器メーカーは窮地に立たされます。そんな中でFenderが日本のある楽器メーカーに注目しました。それがGrecoです。
GrecoはSUPER REALシリーズというヴィンテージギターやベースを再現した楽器を販売していました。当時のSUPER REALシリーズは評価も高く、本家Fenderはそれを利用します。
GRECO「頑張って完コピ目指してたのに…売れなくなっちゃった…とほほ…」
Fender「おぅ、お前がGrecoか?ちょっとこっちこいや」
GRECO「ひ…ひぃ!?Fender先輩!!!?な、なんですか…?」
Fender「お前んとこで作ってる楽器あるやろ?あれにな、Fenderのロゴを入れて販売せんか?お前らは今まで通り楽器を作れる上にFenderの名前が入っとるからバンバン売れる。わしらは名前を貸してるってことで売上をちょっと頂く…どや?新しい時代の扉…一緒に開いていこうやないか?」
GRECO「マジっすか!!!?」
Fender Japan誕生
めちゃくちゃバカっぽく書きましたが、こういった経緯があってFender Japanができたそうです。
グレコ側はFenderの話しを蹴って楽器作りに専念したかったそうですが、結果的にFender の申し入れを受け入れたそうです。元々フェンダーはこの時期、新たな生産ラインを考えていたそうで、日本の楽器に注目してたみたいです。
既にスーパーリアルシリーズとして販売しようとしていたGrecoロゴが入っていない楽器に「Fender」というロゴを貼ってNAMMショーのような場所で並んだとか…
ですから当時のGRECOスーパーリアルシリーズはFender Japanの初期と遜色ないと言っても過言ではないんですね。
ちなみにその当時はGRECOの楽器を作っていたのはフジゲンです。
Fender Japanの初期シリアルJV(ジャパンヴィンテージ)
ジャパンヴィンテージの出生は多分これだと思う。
フェンダージャパンが設立された時、日本で作るヴィンテージ。という由来でジャパンヴィンテージを頭文字をとって「JV」とシリアルにしたのがジャパンヴィンテージという言葉が生まれました。。
フェンダージャパンの製造を担っていたのは日本が世界に誇る楽器メーカー フジゲン。
フジゲン製のフェンダージャパンやSquierは海外でも評価されています。
立ち上げ当初ということもあって、とくに気合を入れて作られてたのでしょうね。
JV,、SQ、Eシリアルなどは現在でも高値で取引されています。確かに素晴らしいJVシリーズを弾いたことがあるのは事実ですが、シリアルがJVだから全てが最高だとは思わないでください。そこは楽器なんで個体差があります。JVだから良い!っていうのは幻想を持ちすぎるとガッカリする可能性もございます。
ジャパンヴィンテージを買うメリット
さてさて、そんなこんなでジャパンヴィンテージと呼ばれる楽器を購入する方にメリットを紹介していきます。
ジャパンヴィンテージのメリット1:良い木材が使われている
当時の日本では現代と違って良質なシーズニングされた木材が豊富にあったそうです。
アルダーやローズウッドも目の詰まった良質なものが多い印象です。上の画像はTokaiのJB60のボディですが、ワーモス製のジャズベボディと見比べても見劣りしない木目だったりします。
つまり、中間グレードでもそこそこ良い木材が使われていたりすることもあるわけです。
当然高いグレード高い楽器なんて木目バッチリ、楽器に使うにはもってこいだぜ!みたいな木材が使われてます。ただし、塗りつぶし系のギター・ベースは信用しちゃダメです。
カタログでは単板アルダーって記載されていても継ぎ接ぎ4ピースのベースとか普通にあります。
70~80年代前半のカタログスペックは信用しない方が精神衛生上安心です。私の使ってるtokai-JB45は塗装を剥がしてみたら4ピースでした。
ただ、塗りつぶし塗装だからと言って全部が継ぎ接ぎってわけじゃありません。
GRECOのMERCURY BASSという当時の6万円で販売していたベースは、塗装を剥がしたらセンの1ピースボディで驚きました。
勿論、1ピースが最高!ってわけではないんですが、とっても得した気分。センの木目ってアッシュみたいでカッコいいですしね。
ジャパンヴィンテージを買うメリット2:ネックが安定しているものは反らない
30~40年も前の木材なので、木材が成長しきって安定しています。
何十年の時を経てもネックが真っ直ぐの個体は今後もネックが動きにくいと考えてもいいでしょう。沢山今までベースをとっかえひっかえしてきましたが、ネックが動かないっていうのはベースとしてこの上なく優れています。
東南アジアとかインドネシアとかの湿地帯で長期ツアーとか行かない限り、今後も反らないんじゃないかな?3年前にネック調整して以来、一度も触ってませんが、反りません。これは本当に嬉しい。
ジャパンヴィンテージを買うメリット3:手頃な価格のものが多い
リサイクルショップやヤフオクなんかでたまにビックリする位の価格で販売されているものがあります。プレミアものになると安く買えることは稀ですが…
でも、それを修理して使えれば戦力になってくれたりします。石ロゴのフェルナンデス、グレコ、トーカイなんかはちょいちょい安値で販売されてくれたりします。Tokaiは数年前からブームになって高騰してたりしますが…
ジャパンヴィンテージを買うデメリット
メリットを書いたところでデメリットも書いていきます。
コンディションの良い個体があれば、コスパ最高なベースが手に入ります。
ただし、経年劣化によって何かしら手を加えてあげないといけない楽器として使えないものも多いのは事実。このデメリットを払拭できればジャパンヴィンテージと呼ばれる楽器は蘇ります。
ジャパンヴィンテージのデメリット1:ネック全般
ネックがダメになっていた場合どうしようありません。
トラスロッドが回りきっていたり、ネックがグネグネに曲がってたり…ロッドでは修正不可能な反りをしていた場合、大規模な修理が必要です。
トラスロッドを交換する場合も、新しくネックを買うのもお金は追加でかかります。フレットがすり減り過ぎててすり合わせ不可能な楽器はもうフレットレスにするか、いっそのことリプレイス用のネックを交換するくらいしないといけません。
愛着があればいいかもしれませんが中古で買ったベースにそれだけのお金を出す価値はあるのか考えた方が良いかもしれませんね。
ジャパンヴィンテージのデメリット2:パーツ類の劣化
配線やピックアップ・ペグ・ブリッジがダメになっているものが多く見受けられます。
この辺りは交換すれば問題もありません。
というより、電装系やポットは交換した方がベース・ギターとしての価値は高まります。ペグ・ブリッジも当時の日本製のもより今ある中国製の方がいい場合だってあります。ピックアップなんかも最近のピックアップを載せ替えた方が道具として使える場合が多いです。
たまに、オリジナルで「なにこれ!?すご!」っていうピックアップも乗ってたりするので、ここも面白いところではあるんですが、だいたい微妙なピックアップが乗ってる印象。
まとめ ジャパンヴィンテージは古いから必ず良いとは限らない!
ジャパンビンテージが神格化されすぎて、過剰評価されている現代ですが、ヤフオクやリサイクル業者が販売しているギター・ベースは道具として使うには頼りないものも出品されています。
長年弦を張りっぱなしで倉庫で見つかったようなボロボロのベースや、ネックが弓のようになってるものなんてものも珍しくありません。
ジャンクと言っても差し支えないような楽器を平気で「ジャパンヴィンテージ!激鳴り!」とか煽って高額販売してる業者は滅びて欲しい。
酷評ばかり書いてきましたが、ジャパンヴィンテージと呼ばれているギターやベースは、蘇らせてあげることができれば、あなたのこころ強い相棒になってくれるかもしれません。
いつの時代もそうですが、これは◯◯だから良いに決まってる。これは◯◯だからダメだろう。といった考えは捨てましょう。
とくに最近のインドネシア製の楽器とか凄いクオリティです。この値段でこのクオリティは凄い!!!!という個体もあれば、「えっ…?FenderUSAでこんな微妙なのある?」っていう個体だってあるんです。
ジャパンヴィンテージに限らずですが、自分が良いと思った楽器が正解です。
他人やネットの意見に流されず、自分が良いと思った楽器に愛情を注いで使ってやってください。
ちなみに…私はジャパンヴィンテージと呼ばれる楽器が好きです。
色んなベースをとっかえひっかえして、車何台買えるんだ?って位ベースを買ったのに、まさか自分が1万5千円で買ったジャパンヴィンテージ(?)のtokaiを使ってるのは不思議です。
まぁ、単純に自分に合ってたんでしょうね。
ライブなんかで外国人の方が私のベースを見て
「Oh!!!!!Tokai!!!!!Cool!!!!Good sound!!!!!」
みたいな反応してくれるのでとても面白い。凄く目をキラキラさせながらさすがTokai!!音が良かったぜ!みたいに褒めちぎってくれるけど、これ当時4万5千円の一番安いグレードのモデルなんですよねー。
コメント
ビンテージベースって、言ってしまえば、とても古い中古品です。
私も10年程前に80万円でフェンダーUSAを買ったのですが、この値段でこの音?と言うのが第1印象でした。最近買った¥15000のベース、いわゆる初心者向けと言われるものの方が遥かにいい音がします。
良い音って人それぞれの価値観によって決まりますものね。ヴィンテージでも全然なものもあれば、なんだこの音!!!!っていうのもありますよね。
ワタシも似たようなギターを1本所有していて、AriaProのマグナシリーズだったと思いました。ご存知かもしれませんがマグナは超絶不人気(アリアさんに失礼)な機種な事も関係してか、
オークションで4000円くらいで落札したのですが蓋を開けてみたら激鳴り+ミラクルサウンド。
今では殆ど使われないセンボディでギターとしてのデザインもお世辞にも格好良くはありませんがネックは安定していて反る事は皆無です。演奏すると所謂腹に来る振動を感じます。調べてみると当時でも4万そこそこの初心者向けギターのようです。
それなのに思い切って購入した憧れのPRSより深い音がするのはここだけの話。…高かったのに…泣
ペグからピックアップ、電装部品まで劣化していた部品は交換したりしながらメンテナンスをしてレコーディングで活躍しております。
マグナシリーズは私が生まれて初めて購入したエレキギターです!笑
あれ音良かったんですね!何も知らない高校生だったので、全く記憶にありません笑
その楽器は末永く愛してあげてくださいね!
電装系やピックアップを変えて、調整すれば楽器って本当に化けますよね~!
私の友人にも似たような方がいてそれまではメインギターがギブソンヒスコレを使ってたんですけど、
アリア78年製のレスポールコピーモデルを友達から貰ったら、それがメインギターになってしまった人がいます…笑
良い音の定義は人それぞれですけれど、楽器は値段ではないのだなぁ…と思い知らされます。
1978年当時 今は無き梅田のナカイ楽器古書の町店に
中古のフェンダーのプレベを買いに行ったんですが
在ったのが14万のジャズベ 10万くらいのつもりだったので思案してたら
店員さんが トーカイのハードパンチャーを 本家に遜色ないよって薦めてもらい
どうせならと最上位のPB-85Nを注文 未成年でローンが組めなかったんですが
お店のご厚意で 毎月5000円づつ店に持ってきてくれればいいよってことにしてもらいました
状態はボロボロですが 買ったままなにも変えずに 今でも愛用してます
SOFT PANCHARさん
梅田のナカイ楽器は店員さん含めてとても良い楽器屋でしたね。そして人情味あふれる購入エピソードも素敵です。
当時に購入したものが今でも愛用されている辺り、本当に良い楽器なんだろうな。と胸が熱くなりました。
今後とも末永くお付き合いし続けてください。